どうも。このまえ、露骨に日本産じゃない真っ白なクモが帽子に潜り込んでてびっくらこいたこがねむしです。虫は平気なほうなんですが、さすがにあれはビビりました(笑
では、一反木綿の続きですー。
変身:一反木綿 形質変化:衣服化
※※※
「――誰……? みなも?」
縫い物をしていた板垣雫は、自室の扉が開く気配を感じて振り向いた。
今夜、夫は出張だ。次女のみなもはさっき風呂場にいったばかりだが、着替えでも忘れたのだろうか?
「お母さん………私……」
「い……泉!?」
そんな馬鹿な。長女の泉は体調を崩して入院している。今日の昼、見舞いに行ったばかりなのだ。それに病院はここから車で一時間もかかる距離。バスは通っているが、それでも泉が一人で抜け出して来ることができるとは考えられなかった。
「お母さん……どうしよぉ……私……私ぃ……」
泉なはずはない。だが、僅かに開かれた扉の向こうで泣きじゃくっている声は、間違いなく娘のものだった。
「泉……ど、どうしたの……? 何があったの……?」
「うっ………うっ……お母さん……私もぉ、人間じゃなくなっちゃった……」
「な、何を言ってるの? 泉……!?」
声の主――泉?――が何を言っているのか、雫にはまるでわからない。しかし声の調子にただならぬものを感じて、雫はただただ動揺した。
既に三十半ば、二児の母である雫だが、ペールグリーンのブラウスとタイトスカートに身を包んだその姿は若々しく、20代といっても通るぐらいである。今はその額に、困惑を表す皺がくっきりと刻まれている。
「とっ、とにかく……中で話しましょう。開けるわよ?」
何よりも、まず相手が泉かどうか確かめなくては始まらない。
「ま、待っ……」
静止するいとまもあればこそ、雫は思い切りよく自室の扉を開け放った。
果たしてそこに娘はいた。ただし、変わり果てた姿で。
「きっ………きゃぁぁぁぁあああああああっ!!!」
泉は――生きた縫いぐるみにされてしまっていた。しかも、ツギハギだらけの醜い姿に……。
飛び出したハサミは布になった泉の身体をざくさくと切り刻み、裁縫針は血のように真赤な糸を使って彼女を縫い合わせた。彼女の中に詰まっているのは、他ならぬ雫が作ってくれた縫いぐるみを引き裂いて取り出した綿だ。
全体のフォルムは、確かに人間だった頃の泉のシルエットを正確になぞっている。だが、身体の各部にはあの不気味な少女の意図によって、悪趣味なデフォルメが加えられていた。
まず、泉の長かった髪がばっさりと切り取られ、その分の黒い布が意図的に手足に使われた。そのせいで、泉の身体はフランケンシュタインの怪物のようなツギハギ模様になってしまっている。
バストやヒップは必要以上に大きく膨らまされ、特にBカップだったバストはEカップ、もしくはFカップに達しようかという大きさに作り変えられてしまった。身長や手足のバランスにやや発育不良気味だった泉の体型を残しているだけに、この造作はいっそうアンバランスである。
逆に手足に関しては明らかに手が抜かれており、手は親指意外が一体化した"ミトン"のような形、足にいたっては指がないどころか、ゾウの足のような円筒形になっている。
また、両方の乳首があるべき場所には、赤い飾りボタンが刺繍されている。そしてもう一つ、泉の秘所にも同様の飾りボタンがつけられていた――クリトリスよ――黒い少女は、困惑する泉にそう言い放った。
屈辱的なクリトリス・ボタンの下……女性器に当たる位置にはジッパー。挙句の果てに尾てい骨の辺りには、余った布が縫い集められて長い「しっぽ」が作られてしまっていた。余った布とはいえこれもれっきとして泉の身体の一部、彼女の意思に合わせてヒクヒクと動かすことができる。このことが、いっそう泉の心を傷つけていた。

「お……お母、さん……助け……て……」
泉は母に助けを求めるかのように、よろよろと足を踏み出す。まるで自由が効かない縫いぐるみの身体はどうしてもギクシャクした動きを強いられ、その上円筒形に改造されてしまった両足は歩きにくいことこの上ない。
「あ………い、いや……」
雫は完全に理解を超えた異形を前に、放心状態に陥っていた。そのとき。
「……あっ!」
「ひっ……!?」
泉がフローリングの床に足を滑らせ、前につんのめったのである。完全に硬直状態だった雫は避けることもできず、そのまま泉に抱きしめられる形になった。
その瞬間、雫の身体に高圧電流でも流されたかのようなショックが走った。
「あっ……が、くああああぁぁぁぁっ!!?」
反射的に娘の身体を突き飛ばす雫。床に転がった泉はポスッ、と軽い音を立てた。
「お……お母さん……!?」
助けを求めた手を払いのけられたショックに見開かれた泉の目に、さらに驚愕せざるを得ない光景が写った。
「ふ、服が……服が混ざるぅっ!?」
ズズズズズゥッ……!! 信じがたいことに、泉に触れられた雫の肉体と彼女のブラウスが、まるで溶け合うように融合してきているのであった。
「あ、い、嫌、嫌ぁぁっ! 助けて! 誰か助けてえぇっ!!」
娘の目の前で、雫の体は服に吸い取られるように同化していく。胸から腹が厚みを失ってくにゃりとひしゃげ、首が襟元にずぶずぶと埋没していく。腰から下、スカートから足元に至るまでの部分も上半身に引きずられるように吸収され、雫は一着のワンピースと化してばさり、と床に投げだされた。
>

「お……お母さんが……お母さんが服になっちゃった……!!?」
「う……動けないっ! な、何なの!? どうなってるのよコレえぇっ!?」
不自由とはいえ自分の意思で身体を動かすことが出来る泉と違って、服になってしまった雫は喋ることしかできないらしい。
「あ……ぁ、わ、私……私のせい、なの……!? お母さん……!!」
縫いぐるみの娘はよたよたと這いより、洋服の母を抱きかかえた。
「い、泉ぃ……わ、私、一体……」
「お母さん……!! ごめ、ごめんなさ……こんなこと、するつもりじゃ……」
泉の涙声の弁解は、突然の金切り声にかき消された。
- 2007/08/17(金) 09:57:55|
- シリーズ/怪談・黒童
-
| トラックバック:0
-
| コメント:5
ぬいぐるみにするとは、予想していなかったです。ですが、すばらしいアイディアです。この調子で後編も楽しみに待っております。しかし最近は、外来種の生き物が多いですね。コガネムシさんについていたクモも外来種であれば毒が強い可能性もあるので十分にきをつけてださい。
- 2007/08/17(金) 12:42:47 |
- URL |
- ドロイド #-
- [ 編集]
おおおおっ、ぬいぐるみ化に衣服化…これは前回に続いてツボ一直線!!
まず、ぬいぐるみ化…ぺらぺらの布にされた後、再度人形に再構成されてしまうとは、何というモノ扱い!
いいですね~、姿形こそ元の人間に近いのに…使われている部分はバラバラだというww
「私もぉ、人間じゃなくなっちゃった……」
このセリフにぐっと来るのは、私だけではないはずw
そして…衣服化キタコレ!!
これはもう言うこと無しですww
前回も申し上げましたが、やはり私はペラペラなモノにされてしまうというシチュが一番好きなもので…服にされてしまうなどまさに最高です!
そしてこの服化、もう最高すぎて言葉になりません…w
石化など特にそうなのですが、私は状態変化シチュの「動けなくなる」という点に激しく萌えるタチでして…「う……動けないっ! な、何なの!? どうなってるのよコレえぇっ!?」
これでもう完全に撃沈ですw
雫さんはママンキャラですがとっても萌えましたよ、いつまで経っても若いままのママンキャラは二次元の特権ですよねw
そして何より嬉しいのが、まだ中編だという事です!
次回は元気な少女のみなもたんがターゲットにされてしまうのでしょうね…もう本気で楽しみにしておりますのでww
ではでは~。
- 2007/08/17(金) 23:22:32 |
- URL |
- 時報の人 #NcbmeUl2
- [ 編集]
おお・・・連鎖反応ですか。
ということは、人に戻して欲しかったらあと99人洋服に替えろって言う展開でしょうかね~~
できれば、雫の変形過程の絵が見たかったです。
- 2007/08/18(土) 15:58:28 |
- URL |
- 現在楽識 #-
- [ 編集]
>ドロイドさん
見た感じかなり毒蜘蛛っぽかったのでビビりました(笑
幸い、一週間たってもなんともないので一安心しています。
>にしーえいちさん
ありがとうございますー。
>時報の人さん
「動けない」はポイントですよねっ。固め・状態変化後の意識の有無でいけば自分は圧倒的に意識あり派であります。
若いままのママンは私の趣味です(ぉ
>現在楽識さん
お察しのとおりです。雫ママの過程は力量的に厳しかったので見送りに(汗
- 2007/08/24(金) 23:41:54 |
- URL |
- こがねむし #-
- [ 編集]