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ということで後編です。
ちなみにコレは「メイド・ガーデン」と同じく昨年末のコミケに向けて書いていたものなので、タイトルと最近話題の某アニメとはまったく関係ございません(笑
肉体改造:女性化、大人化
一番最初にくじけたのはソラタだった。
ソラタは小屋の隅っこにへたり込んで、
わんわん泣き出した。
でも、誰にも慰めてやる余裕なんてなかった。
そのうちソラタも泣き疲れて、
ぼんやり座っているだけになった。
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ソラタ以外の三人は、小屋の中を探した。
燃え残ったものの中に、呪いを解く方法が
隠されているかもしれないと思ったのだ。
でも、駄目だった。
いくら探しても灰と炭とゴミしか出てこない。
ぼくは絶望して、座ったきり立ち上がれなくなった。
太陽が傾いて、オレンジ色の夕日が入ってくるころには、
ぼくたちはすっかり大人の体型になっていた。
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ケンとショースケは最後まで頑張ったけど、
何も成果は上がらなかった。
みんな髪が伸びてきている。
手足の爪には、いつの間にか真っ赤なマニキュアと
ペディキュアが塗られていた。
日が沈んだ。
月明かりが天井の穴から差し込んで、小屋を照らす。
みんな無言で、泣いていた。
なんだか顔つきまで変わってきているような気がした。
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ぼくたちがどうなるってしまうのか、
もう分かっていた。
マドカさんになるのだ。
――終わりは唐突にやってきた。
ソラタが突然、頭を抱えて叫び始めたのだ。
「うっ、うわああああっ! やめてええっ!」
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呼応して、ケンとショースケも泣きわめく。
「いやだああっ! 消えたくないいっ!」
「やめて、マドカさん許してゆるしてええっ!」
みんなが苦しんで、泣き叫んでいるのに、
ぼくだけは叫ばなかった。
すごい頭痛がして、頭が割れそうだったけど、
耐えられないほどじゃなかったのだ。
なぜ?
やがて、頭痛がすっと引いていくと、みんなも
静かになった。
「だ、大丈夫……? みんな……どうしたの?」
おそるおそる訊くと、三人がゆっくり顔を上げた。
マドカさんだった。
三人とも、完全にマドカさんの姿になっていた。
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「あらぁ……ナオ君」
「意識が残っちゃったのねぇ。失敗しちゃった」
声も口調も、表情もマドカさんそのものだった。
「そんな……。ケン? ショースケ?」
「みんな消えたわ。心も上書きされて消滅しちゃった。
もうアタシしかいない。ナオ君も消えちゃえば楽だったのに、可哀想にねぇ」
「う……うわああああああっ!!」
ぼくは絶叫して、そして意識を失った。
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朝、目を醒ますと、三人は消えてきた。
ぼくは廃墟の中に裸で転がっていた。
ぼくの心は確かに、まだぼくのままだった。
だけど、身体はもう完全にマドカさんのものになってしまっていた。
そしてもう、二度と元に戻ることはできないのだと分かっていた。
あれから一年がたった。
ぼくは隣町のスナックでホステスをしている。
他にできる仕事なんてなかった。
こうする以外に生きていく方法がなかったのだ。
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こんな身体なのに心は子供で、
しかも男の子だなんて、
誰も信じてくれるわけなかった。
お酒も飲まなくちゃいけなかった。
ぼくは男の人に何度も変なことをされけど、
お金が必要だったから逆らえなかった。
ある朝、ぼくは店をあがって、家に向かっていた。
いまはホステス仲間のアパートに住まわせてもらっている。
歩きながらふと、彼女たちはどうしているだろう、と思った。
みんながが変わり果てた、あのマドカさんたちは。
マドカさんは何がしたかったんだろう。
死なない魔法、とショースケは言っていた。それは一体?
そのとき、路地裏から苦しげな呻き声が聞こえた。
誰か具合を悪くして、倒れているのかもしれない。
ぼくは路地裏を覗き込んだ。
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その光景を見た瞬間、ぼくは分かった。
分かってしまったのだ。
マドカさんは他人の身体を次々乗っ取って、無限に増殖するのだ。
そうすれば、一人や二人死んだってなんてことはない。
地球上に人間は60億人もいるのだから――。
いつか、世界がマドカさんで埋め尽くされる日がくるのかもしれない。
その日が来るまでに、ぼくはちゃんと死にたいと思った。
おわり
オチまで読んでいただければ分かると思いますが、かなり「富江」に影響されていますね(笑
五月に新作の映画が公開されるそうで、ちょっと楽しみにしております。
- 2011/03/20(日) 14:58:04|
- 肉体改造
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| コメント:4
過去の作品や絵を閲覧させていただきました。
これでもかってくらい私の好みにあっていて困りますね、はずれがないです!
目の付けどころがシャープですね(笑
- 2011/04/19(火) 22:23:04 |
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